先日ある方とお会いして、SNSについて議論してきました(というより、専門家の方だったので一方的にお話を聞いていただけですが)。その時に「参考になるよ」と教えられた『パタン・ランゲージ』という本を買い、早速読み始めています。
現実世界のコミュニティは、物理的な環境によってその性質が左右されます。例えば、人々が集合できるような広場があるか無いか、広場は広すぎないか/狭すぎないか、その広場に至る道があるかないか、などといった点です。『パタン・ランゲージ』では都市や建築物、家、部屋の構造といった253の構成要素が、人間関係やコミュニティにどのような影響を与えているかが考察されています。
※話はずれますが、この本の特徴の1つは、それぞれの要素がハイパーテキスト形式で結びついている点。ハイパーテキストの概念を用いて書かれた本としては、最も古い部類に入るのだとか(原書は1977年発行)。
デジタル世界には物理的な制約があるわけではありませんから、現実世界の考察を直接当てはめることはできないでしょう。しかしデジタル上に展開されるコミュニティであっても、人間同士が交流していることには違いありません。活発で健全なコミュニティが生まれるためにはSNSはどうあるべきか、そのヒントが得られるのではないかと考えています。
例えば『パタン・ランゲージ』の要素(13)は「サブカルチャーの境界」について分析されています:
モザイク状のサブカルチャーでは、無数の文化が隣接しながら強烈な個性を発揮せねばならない。だが、各サブカルチャーは固有の生態学にしたがう。それらは物理的境界により物理的に分離されてはじめて、隣接文化に妨げられず強烈な生命を保てる。
コミュニティの境界線に関する分析では、この他にも:
人びとは、自分の帰属すべき見分けやすい空間単位を必要としている。(14.見分けやすい近隣)
近隣にとって、境界の力はきわめて重要である。それが弱すぎると、近隣の存在を明らかにする個性が維持できないであろう。(15.近隣の境界)
などといった記述があります。確かにチャイナタウンを例に考えると、「中華門」といった物理的で分かりやすい境界線によってコミュニティが区別されています。世界中にある中国人コミュニティが高い結束力を維持しているのは、この「コミュニティの境界線」も理由の1つかもしれません。
そこで考えたのですが、「Mixi」のような様々なコミュニティが集まっているSNSでは、コミュニティの画面をカスタマイズ可能にしてはどうでしょうか?デジタル空間で「物理的境界による物理的な分離」を行うことはできませんが、カスタマイズにより「見分けやすい空間単位」を作り出して、それによって参加者の帰属意識を高めることができるかもしれません。
例えば「ThinkPadコミュニティ」では背景を黒くして、画面上部に「価格.com」から取得したThinkPadシリーズの価格データを表示したりとか、「吉祥寺コミュニティ」なら最近オープンしたお店の写真を、画面上部に自由に貼り付けられるようにしたりとか。独特で分かりやすいデザインが可能になれば、アクセスしただけで「あなたは○○コミュニティに参加している」というメッセージを印象付けることができると思います。
問題はそんなデザインを誰が行うかという点ですが、現実のコミュニティが誰か1人の独裁者によって作り出されるわけではないことを考えると、Wiki的にコミュニティ参加者誰もがデザインを修正できるようにしておいた方が良いかもしれません。参加者のやりとりの中から、コミュニティの性格を反映したデザインが生まれてくることでしょう。
今後コミュニティは、現実世界とデジタル空間、両方を通じて発展していくことになります。2つの世界をそれぞれ研究し、その結果をもう一方の世界に応用していくことで、より優れた環境構築に役立てることができるのではないでしょうか。
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