最近、Yahoo! Research Berkeleyで研究員をされているDanah Boydという方のブログを面白く読んでいます。UCバークレーの博士課程に在籍中で、ソーシャルメディアを研究中とのこと:
■ apophenia :: making connections where none previously existed
その最新エントリ(3月21日)で、なぜFriendsterはMySpaceに負けたのか?が論じられています:
■ Friendster lost steam. Is MySpace just a fad? (apophenia)
ただしこのエントリは記事のごく一部です。「書いているうちにブログには適さない長さになってしまった」とのことで、全文は別URL(http://www.danah.org/papers/FriendsterMySpaceEssay.html)に保管されています。
FriendsterとMySpaceの成り立ちから、その性格とユーザーとの関係を考えた論文です。詳しくは全文を読んでもらうとして(ただし長い上に少しクセのある英語)、ここでは特に「SNSのプロフィール画面」について考えてみたいと思います。
【SNSのプロフィール画面はカスタマイズ可能にすべきか?】
これは『パタン・ランゲージ』でも指摘されていることですが、人間は自分だけの空間を持つことによって、逆に社会とのつながりを健全に構築することができます。従ってコミュニティを形成する場合には、いかに「決して断絶のためではなく、つながりを生むための」パーソナルな空間を用意するかが重要になります。
Danahの論文では、MySpaceのプロフィール画面が自由にカスタマイズ可能である点が、MySpaceが若年層に受けた重要な理由の1つとして挙げられています。ユーザーはカスタマイズを通じ、デジタル空間でのアイデンティティを確立することになります。そのプロセス自体が重要なことに加えて、「他人のプロフィールを見る楽しさ/それを参考に自分のプロフィールを作り変える楽しさ」というものが生まれるわけです。
一方、日本のSNSでプロフィール画面を自由にカスタマイズ可能なもの、というとちょっと思い浮かびません(僕が知らないだけかもしれませんが)。日本のFriendster?であるMixiはと言えば、あの賛否両論あるオレンジ色を変えることも、各コーナーの位置を変えることもできない、自由度の低い設計となっています。果たしてMixiも、MySpaceのようなカスタマイズを許すべきなのでしょうか?
一方で、ユーザーを一定のテンプレートに従わせることにはメリットもあります。MySpaceやTagWorldといったアメリカの「若年層向け」SNSを見た人なら分かると思いますが、ユーザーがそれぞれ自由に設計しているせいで、プロフィールが非常に読みづらくなっています。バランスを無視した配色で、読んでいるだけで目がチカチカしてくるページも。逆にMixiなど日本のSNSでは、他人のプロフィール欄を一見しただけで名前、略歴、友人関係、参加しているコミュニティなどがすぐに把握できます。また決められたテンプレートが存在していることで、SNSに慣れていないユーザーでもプロフィールが簡単に作れるというメリットもあるでしょう。
従って「テンプレートが用意されていること」は、(1)カスタマイズによる自己満足を排し、プロフィール欄からの情報を得やすくする、(2)初心者がサービスに参加しやすくする、という2つの効率性を保証するものだと言えます。
ただこの効率性という点も、Danahの論文では「必ずしも重要ではない」と論じられています:
Often, people don't need simplicity - they want to feel proud of themselves for figuring something out; they want to feel the joy of exploration. This is the difference between tasks that people are required to do and social life. Social life isn't about the easy way to do something - it's about making meaning out of practice, about finding your own way.
シンプルであること=サービスの魅力とは限らない、ソーシャルライフにおいては、時として非効率な方が魅力的な場合があるというわけです。
この自由と効率のバランスというのは、結局のところ、人々が何を求めてそのSNSに参加するのかという点にかかってくると思います。ビジネス上の交流を求めるようなSNSでは、効率性が重視されますから、プロフィールのテンプレートは1つだけであるべきでしょう。しかしMixiのような「楽しむこと」が目的のSNSでは、自分のアイデンティティを明確にすること=プロフィールをカスタマイズすることが可能になれば、他人との交流がより促されるのではないでしょうか。
その意味では、現在のSNSのほとんどがプロフィールのカスタマイズ不可能というのはチャンスなのではないでしょうか。MySpaceのように20歳前後を明確なターゲットとし、何か目的を持った活動ではなく交流の輪を広げることを目的として、プロフィールの自由なカスタマイズが可能なSNSが現われれば、面白いことになるように思うのですが。
以上、なんだかまとまりのないエントリになってしまいました。もし考え方が変わった時には、<追記>でバラバラと書き足してみたいと思います。
最近のコメント