石川県議会で、保護者に対し「中学生以下の子供には携帯電話を持たせないよう努力するように」と命じる条例改正案が可決されたそうです:
■ 小中学生はケータイ・ノー、石川県議会が可決 (読売新聞)
ちょっと前から話題になっていた話ですが、本当に可決しちゃったんですねぇ。実行力がこれっぽっちも感じられない政策で、単に混乱を招くだけのものになりそうな気がしますが、まぁこれが可決されるだけで満足感を得られる方々が多かったんだと思います。
で、申し訳ないのですが、そんな石川県議会の方々に悪いニュースをひとつ。最近、文部科学省からこんな調査結果が発表されていたのをご存知でしょうか:
■ 平成20年度「学校図書館の現状に関する調査」結果について (文部科学省)
タイトルの通り、学校図書館の現状調査を行ったものです。実は1993年に「学校図書館図書標準」というルールが定められ、「図書館に何冊の本を整備すべきか」という標準冊数が学級数に応じて決められるようになったのですが、この標準をクリアしている公立小中学校がどれくらいあったのかが公表されています。ちなみに全国平均では
- 平成19年度末図書標準達成学校数の割合(括弧内は18年度末)
- 公立小学校: 45.2%(42.0%)
- 公立中学校: 39.4%(36.8%)
とのことで、いずれも1年前よりは上昇しているものの、半数以上の学校が目標未達という結果に。やはり自治体の財政難という状況がここでも見られるようで、なかなか国が求めるレベルまでは蔵書を充実させることができないでいるようですね。
では、ウワサの石川県はどうかというと。公表されているPDFファイルの33ページによると、こうなっています:
- 公立小学校: 39.8%
- 公立中学校: 21.2%
とのことで、全国平均にも満たない寂しい結果に。特に中学校では5校中4校で「本が足りない」という状況が発生しているのですから、危機的な状態と言っても良いのではないでしょうか。携帯電話が青少年にもたらす悪い情報について論じるのも結構なことですが、一方で良い情報に触れる機会が失われているというのも何とかすべき問題だと思います。
ちなみに iPhone という携帯電話には、「青空文庫」という著作権切れの文学作品を集めたウェブサイトにアクセスできるソフトがいくつかあってですね。まるで本当の文庫本を読むかのような感覚で、古典の名作に触れることができますよ。しかもソフトの価格は数百円!……などと茶化すのはそれぐらいにして、実際に神戸市では制服ならぬ「制携帯」を導入した学校もあるそうです:
■ 制服ならぬ「制携帯」導入 神戸の私立須磨学園 (asahi.com)
こうした取り組みが行える学校は限られている、というのは分かります。しかし「臭いものにフタ」という態度ではなく、積極的に教育に役立てるという方向が探られても良いのではないでしょうか。
ところで警察庁から発表されている「平成19年中における少年の補導及び保護の概況」によれば、平成19年度の石川県の中学生生徒数は約3万4,000人。同年に検挙・補導された生徒は265人で、人口比(※生徒数1,000人当たりの刑法犯検挙・補導人員)は7.8という結果でした。ちなみに人口比の全国平均は12.1。「だからこそ予防策として導入するのだ」という意見もあるかもしれませんが、目に見えやすいリスクに踊らされるよりも、「学校で本が足りない」のようなジワジワと影響するリスクにも目を向けるべきだと思いますよ。
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