昨日は帰りがけに、「かぶいて候」という居酒屋で飲んできました。
こんな強気な警告文をクリアした者のみが楽しめる、ナイスなお店でした。チェーン店のようなキレイなメニューがあるわけではなく、壁一面、縦横無尽かつランダムに貼られたお品書きの中から気に入ったおつまみを探し、注文するというスタイル。写真を撮るのを忘れたので、図で表現すると:
こんな感じ。小さい居酒屋だとこういったスタイルのお店は多いと思うのですが、ふと考えてしまいました。お客から「探しにくい!」とクレームが入ったことはないのでしょうか?
試しに実験してみましょう。上のお品書きの中から3品選び、覚えておいて下さい。次に下のお品書きを見て、この中からも3品選んでみてもらえるでしょうか。
どうだったでしょうか。2つのお品書きで、選んだメニューは変わりましたか?またおつまみの「選び方」や選んでいる時の感情に、何か変化はありましたか?
「酒を飲むぐらいだから、お店もお客もお品書きの並べ順なんか気にしてない」というもっともな説を脇に置き、あえて「ランダム型」に深い意味があるのだとすると、僕はそれは「思考の自由度が高くなる」点ではないかと思います。つまりランダムにメニューを並べられると、お客は一通りお品書きに目を通し、そこから「ピン」ときたおつまみを選びます。会社にいた時は「よーし、今夜は焼き鳥だ!」と思っていたのが、「チゲ鍋もありだな」と思うかもしれません。
「理路整然型」は一見論理的に見えて、実はお客に一定の思考パターンを取ることを強います。「お酒のときはあっさりなものがいい」と決めている人は、後者のようなお品書きを見た場合、メニューの右半分しか見ないでしょう。その中からさらに、「野菜系/肉・魚系」という評価軸でおつまみを選ぶことになります。「やっぱりチゲ鍋がおいしそう」といった意外な発見が起きる可能性は、「ランダム型」よりも低くなるはずです。
いずれにせよお客は欲しいおつまみを手にするのだから、どちらの表記法でも特に問題はありません。しかし「ランダム型」は、お客に「発見する楽しみ」や「選ぶ楽しみ」を与えるという利点があるように思います。居酒屋の目的が「飲んで楽しむ」だからこそ、許されるインターフェースでしょう。
翻って考えたとき、社内ブログにも同じような発想があっても良いように感じます。例えばトップ画面にログインしたとき、そこには逆時系列に記事が並んでいるのではなく、最近投稿された記事のヘッドラインだけがランダムに、画面のあちこちに表示されているというのはどうでしょう。ランダムというのがラディカル過ぎるなら、次のCNET News.com画面のように、アクセス数と投稿の新しさに応じて表記するというのはどうでしょうか:
このインターフェースではボックスの大きさでアクセス数を、色の濃さで記事の古さを示しています。各ボックスをクリックすると、それぞれの記事の本文にジャンプするようになっています。
きっちりとした情報記録が目的の社内ブログなら、この方式は意味がないでしょう。しかし「ニュースやちょっとした思い付きを皆で共有し、新しい『発見』や『気づき』を生み出す」ための社内ブログであれば、居酒屋インターフェースも有効だと思います。居酒屋と同様、心のガイドラインを取り払うことで思いがけないニュースを見つけたり、これまでにない情報の組み合わせ(例えば上記のCNET Newsを見て、iTunesや音楽配信とXboxの関係、MacBookとクチコミマーケティングと関係を考えてみたり)を思いつく可能性が高まるでしょう。
何よりもまず目的。そしてその目的を果たすためには、大胆な仕組みの模索も必要なのでは--と異常な寒さですっかり酔いが冷めた頭で考えながら、帰ってきました。
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