『貧乏人の逆襲!』を読了。「無銭飲食」「家賃を払わない」「オリックスの宮内会長にペンキをぶちまける」など過激な内容が出てくるのですが、とてつもなく面白い本でした。文字通り貧乏で将来が不安だという人や、逆に「仕事を100倍効率化する!」とか「成功する人の100の秘密!」とかいう本にどっぷり漬かって仕事一直線な人も読んどくべき。
副題に「タダで生きる方法」と付いているのですが、別にお金を切り詰めて生活する方法を説く本ではありません(もちろんそういった内容も含まれていて、「超法規的措置として食い逃げという力技もある」などという一節まであります)。そんな小さな話に止まらず、「まっとうに仕事して偉くなって結婚して子育てして……」「決められたルールにはおとなしく従って混乱を起こさず……」という価値観に切り込む(というより真っ向から反対する)というのが本書の醍醐味です。「はじめに」からしてこんな感じ:
すまん、ちょっと言い過ぎた。「タダで生きる方法」といってもさすがに難しいか……だが!それ以上のとんでもない作戦を練ってしまうので安心してくれ!
いやー、なんだか知らないがずいぶんと窮屈な世の中になってきた!ああ生きろ、こう生きろ、あれやっちゃダメだ、この人を見習え……うるさいのなんの!
最近、「格差社会」とか何とか言って、妙に「上を目指せ」的なプレッシャーが強いが、そんなバカバカしい今の世の中の流れになって乗ってられるか!アホくさい!中途半端なサラリーマンになって30年ローンで家を買い、逃げられなくなってニッチもサッチもいかなくなったり、パッとしない男と結婚して退屈な主婦生活を送ってストレスで子供のクビを絞めちゃったり、会社に忠誠を誓って働いてバイトから正社員になり、さらに昇進してバリバリ出世してるつもりだったのに実は単にコキ使われてただけで挙句の果てに鬱病になって死んじゃったり、こんなくだらない話はない……。
やい!こうなったら、もう開き直って勝手に生きていくしかないぞ!
まだまだ続くのですが、「はじめに」を読むだけでも目茶苦茶おもしろいので是非。
この後、本文では上記のような「タダ飯を食う」「住むところを確保する」といった話から、「メディアを勝手に作る(※ネットを利用するだけの話ではなく、チラシを配ったり自費出版するという内容。ちなみにネットは「いろいろやっているつもりでも、よくよく考えてみれば、モニターの画面の色が変わっているだけで、実は何もやっていないので、これだけじゃ面白くない」とのこと)」「リサイクルショップを開く」「公共施設を勝手に作る」などの話へと続いて行きます。さらに「デモを行う」「選挙を利用して大騒ぎする(※このくだりは必読!)」というレベルにまで解説が及び、まさしく「逆襲するための実用書」といった趣。
というわけで、一部の方からは「そんなマッチョなことできるかよ」という反発を受けてしまうかもしれませんが、過激な内容が含まれているものの実際に参考になる情報も多いと感じましたよ。ちなみに「この本を読んだらさっさと人に貸せ」と提言されているので、貸して欲しいという方は声を掛けて下さい(すんませんが面識あって手渡しできる人限定で)。
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書評はこのぐらいにして、僕が最も素晴らしい!と感じたのは、他人とのつながりを力に変えている点。例えばそのものズバリ「地域で繋がって生きる」というタイトルの節では、こんな文章が登場します:
さて、我々貧乏人が世の中を生き抜くには、地域とのつながりや人脈が大事なことはところどころで述べてきた。我々貧乏人はどうにもこうにも金がないので、一人でウロウロしている場合、死なないように金持ちや金をくれる人の言うことを聞かなくてはならない。でも、これはどうにも癪に障る。
本当に働けない人は生活保護など行政に頼るという手段もあるのだが、その場合、国が傾いた瞬間に餓死しかねないのであまり信用できない。首相などが「もう払えねえ!どう叩いても出ねえよ!!煮るなり焼くなり好きにしろい!」とか言って机の上にあぐらをかいて開き直りだしたら大変だ。それに、この本では「なるべく勝手に生きていく」ということをテーマにしたいので、ここはひとつ「貧乏人が束になったら何とか生きていけたりするのではないか?」という作戦を練っていきたい。
そうしたときに商店街をはじめとする地域が大事になってくるのだ。街で貧乏人が生きぬく作戦を練ってしまおう!
そして「束」になるための作戦が披露されていくのですが、良い意味で奇をてらったものはありません。地元の商店街や町内会を利用したり、自分たちで「人が集まるスペース」を作って交流の輪を広げたり。間違っても「SNSに参加してコミュニティを作ろう!」などという話は出てきません。
以前のエントリでも書いた通り、個人的にも、いまの人々は分断され過ぎている――そして小さなつながりでも予想以上の力を生むと信じています。SNSがスゴイと注目されていますが、それだって力の源泉は個人と個人のつながり。テクノロジーはそれを増幅させているだけに過ぎません。バーチャルで何気なくできるようになったことを、リアルでも実践してみれば、何か面白いことが生まれるのではないか。本書はそう感じた時に第一歩を踏み出す、とりあえず行動してみるための実用書になるように感じました。
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